アダルトビデオ(AV)やインターネットの動画に押され、いまや絶滅の恐れもあるピンク映画。支えるのは数十年にわたって見続けるオールドファンたちだ。東京・上野の老舗成人映画館は今月、館内の段差をなくすなどバリアフリーの新館をオープン。補聴器の代わりとなるヘッドホンも備え、高齢化社会での生き残りを図る。 (早川由紀美)
クリーム色の建物に「OKURA THEATER」と銀色の文字が浮かぶ。文字通り、シルバー世代に対応した上野オークラ劇場新館(東京都台東区上野)。十四日、オープン記念のトークショーを訪れた客の中には、女優にわたす花束を持った人もいれば、足腰を支えるつえを持った人もいた。
「旧館は、入り口に三段の階段があり、上り下りできないおじいちゃんもいた」。斎藤豪計支配人(44)は、約六十年の歴史のある旧館を閉鎖し、斜め向かいに新館を建てるまでのいきさつを説明する。観客の高齢化が進み、現在六十歳以上のシニア割引を利用する観客は三割強に上る。車いすの客は従業員が何人かで担いで館内に案内していたという。新館は段差のない自動ドアで、車いすでそのまま見られるスペースもある。
劇場を運営する大蔵映画は、和製ピンク映画の第一号とされる「肉体の市場」(1962年)を配給したことで知られる。旧館は六〇年代後半からピンク映画を専門に上映してきた。
ピンク映画の最盛期は八〇年代前半。七一年に始まった日活のロマンポルノの成功で、大手映画会社の系列も成人映画に進出。若手監督の登竜門でもあり、「おくりびと」の滝田洋二郎監督なども活躍していた。
劇場にも大勢のファンが訪れた。昼間は営業のサラリーマン、オールナイト上映には終電を逃した酔客など、どの時間帯もにぎわったという。男子高校生にとっては、大人になったら行ってみたいあこがれの場所でもあった。
しかし八〇年代後半、AVの登場で、若いファンは劇場から姿を消した。多いときには全国で数百はあったという成人映画館は、七十館ほどに減った。大蔵映画の系列会社で制作、配給するピンク映画は現在年間三十六本。AVと競合するなどの理由から、多くがDVD化などの二次使用はされず、一週間余上映されただけで消えていく、はかない存在だ。
「今のままでは未来が見えない」(斎藤支配人)。新館はバリアフリーという形でオールドファンに配慮しつつ、新たな客層を開拓するため、オープン前には女性限定の上映会も試みた。百四十二席は満席となり、立ち見も。死んだ妻が女子高校生の身体で復活する夫婦愛をモチーフにした作品には、涙を流す女性客もいたという。
十四日のトークショーにも登場した池島ゆたか監督(62)も「ピンク映画は終わりゆく産業」としつつ「五十年間、女性という人類の半分を拒絶してきた。女性を主役にした映画なので、歴史の最後ぐらい見てほしい」と話す。インターネット上の交流サイト「ミクシィ」で一目置かれる映画好きがピンク映画を薦めている影響などで、新たなファンも生まれているという。
ただ、成人映画館がおじさんたちの“聖域”というバリアーは依然高い。福岡市の成人映画館「天神シネマ」では今春から、毎週水曜日午後六時以降を、女性とカップル限定としている。
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